5・6月は株主総会の季節だ。そのためか、最近よく買収防衛策についての記事を目にする。
どれも基本的には「買収防衛策の廃止」や「買収防衛策の継続に反対」のように、買収防衛策に対してネガティブな内容である。
実際、今年は買収防衛策を廃止する企業が過去最高となっている。
しかしここで疑問なのが、こんなにも反対されている買収防衛策をほとんどの企業が採用していたということである。
本日は買収防衛策について述べていく。
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過去の日本企業
「持ち合い株式」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
政策保有株ということもあるが、これはかつての日本企業の多くが取引先や取引銀行と、お互いの会社の株式を持ち合っていたことを指す。
これにより取引先との関係がより強固になるのと同時に、自社にとっての安定株主となっていた。
これも一種の買収防衛策といえよう。
特に銀行はさまざまな会社と付き合いがあるため、多くの会社と株式を持ち合っていた。
現在ではその解消に各銀行が苦労しているようである。
外国人株主の増加
90年代後半から、日本企業の外国人持ち株比率が増加し始める。
90年代前半までは10%に満たなかったが、2000年代に突入する頃には20%を超えていた。
同時に持ち合い株式の解消も進んでいったため、安定株主比率は逆に減少していた。
これにより、株主の監視の目が強くなっていく。
敵対的M&A
外国人株主の増加と同じ時期に世界ではM&Aが非常に増えていた。
中には株式の過半を買収し企業を子会社化するような敵対的買収も含まれていた。
この敵対的買収の中には買収した企を経営する目的ではなく、その株式を高く買い取らせるためのような悪質な買収も少なくなかった。
このような買収から自社を守るために導入された方法が買収防衛策なのである。
買収防衛策・ライツプラン
買収防衛策には様々な種類がある。
ポイズン・デットやゴールデン・パラシュートなど数多くあるものの、日本企業の多くは「ライツプラン」といわれる方法を採用していた。
これは買収者が一定の割合(多いのは20%)の株式を買い占めた際に、買収者を覗く既存の株主に対して新株を発行し割り当てる方法である。
これにより買収者の株主保有比率を低下させる効果がある。
詳細には期間の定めが必要であったり株主総会の商人が必要であったりなど細かい規定が定められている。
このライツプランによって企業は自社の被買収リスクに備えていた。
現在の考え方
昨今ではコーポレートガバナンスコードやスチュワートシップコードなど、企業・投資家と外部の対話が非常に重要視されている。
株主は企業が取締役たちのいいようにされるのを嫌う。
ステークホルダーの自分たちに利益を最優先に配分するように求めている。株主の期待に答えられなかったり、意見をないがしろにした企業は市場から退場させられてしまうかもしれない。
そんな環境の中、買収防衛策を廃止するのは当然かもしれない。
株主から見ると、買収に便乗して売却すれば高値で得ることができる可能性があるからである。
また、買収を仕掛けることができる水準まで株価が下がってしまっているのは経営陣の責任だという考え方もある。
今後も買収防衛策の廃止の流れは止まらないだろう。
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