お家騒動で話題になっている出光興産株式会社は、7月3日に「公募による新株式発行に関するお知らせ」を適時開示した。
開示によると、普通株式を4800万株新たに発行し、約1,400億円を調達するとのことだ。
調達した資金は既存借入の返済や、海外事業等の成長戦略に使うと発表されている。
この増資が実現した場合、創業家の保有議決権比率は現在の33.92%から約26%まで低下し、特別決議の否決ができなくなってしまう水準だ。創業家側はもちろん反発しており、裁判所へ差し止め請求を実施しているようだ。
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お家騒動はいつから?
そもそも出光興産のお家騒動の発端は2015年まで遡る。
昭和シェルと合併で基本合意したものの、創業家の反対により現在まで約2年も実施できていない。
昭和シェルの株式については2016年の12月にすでに31.3%取得している状況にもかかわらずである。
先日6月29日の株主総会においても、創業家の代理人は人事案に反対を表明した。
しかしその議案は賛成比率約61%で可決された。
この賛成比率に創業家の保有議決権比率を考慮すると、創業家以外の株主のほぼ全ての方が合併に賛成していると判断したようだ。
それ以外にも4月にJXホールディングスと東燃ゼネラル石油が経営統合したことも、今回このような強攻策をとるに至った要因として挙げられる。
増資が合理的であるかが焦点
創業家サイドはこの強攻策に対して差し止め処分の請求を行っている。この請求が認められるか注目が集まっている。
同様の事例で2005年にニッポン放送の新株予約権発行に対する差し止め請求が認められたことがある。
この事例では、ニッポン放送がフジテレビに新株予約権を発行することの主目的が支配権の維持であると裁判所が判断した。
つまり、発行目的の合理性を示すことができるかがポイントとなる。
今回は既存借入の返済と海外事業等の成長戦略に使うと発表しているが、その資金調達手段が増資であることが合理的であるかが処分を検討する上での焦点だ。
適時開示を見る限り、それなりに詳細な計画が記載されている。
しかし株主総会後のこのタイミングでの発表で、主目的が資金調達であると思う人がどれだけいるのだろうか。
個人的には創業家の議決権比率の目的しかないように思える。皆さんはいかがだろか。
この事例からもわかることであるが、やはり創業家の保有議決権割合は非常に重要である。
相続対策で株を分散させてしまうことは、次世代やその次の世代に大きな悩みの種を残すことになりかねない。
自社株式の承継についてはやはり慎重に検討すべきだと感じた。
〜追記〜
創業家の差し止め請求について、東京地方裁判所は7月の下旬までに可否を判断するようだ。
4日の東京市場で出光興産の株価は14%下落し、年初来安値をつけた。お家騒動がどう収束するのか、目が離せない。
公募増資の結果について
出光の公募増資、地裁増資を認める!創業家は即時抗告するも高裁は棄却!
でまとめているので見たいただきたい。
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